人 間 の 科 学
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セックスがいやだなんて


セックスがいやだなんて、とんでもない。セックスほど素晴らしいものはない。大部分の健全な人々はそう思っているのではないか。ところが、大部分の人がセックスに積極的であるのには、それなりの背景がある。その背景を取り去ると、人間というものは、そう簡単にはセックスを楽しめないものらしいのだ。

人間という生き物は、性的な刺激に容易に反応するように出来ている。性的な刺激に反応して興奮しているせいで、普通なら嫌悪すべきようなことも、積極的にできるようになる。つまり、人間がセックスに積極的なのは、人間に内在している刺激=興奮のメカニズムが働いているからだというのだ。その辺の事情を、実験を通じて解明したグループがいる。オランダ・フローニンゲン大学の性科学研究グループだ。

グループは、90人の若い女性を対象に実験を行った。全体を三つのグループに分け、それぞれにヴィデオ映像を見せた。第一のグループには女性好みのエロティックな映像、第二のグループにはスカイダイビングのようないかにもアドレナリンを分泌させそうな映像、第三のグループにはありきたりの映像だ。

その後で、16種類の課題に対する反応を調べた。いずれも、普段なら誰もが嫌がる事ばかりだ。たとえば、虫の入ったコップの水を飲むとか、毛虫の隣りに置いてあるクッキーを取って食べるとか、使い終わったコンドームに指を突っ込むとかである。

すると、性的なイメージを見せられたグループの女性は、他のグループの女性に比べて、やすやすとこれらの課題を成し遂げたという。性的なイメージで興奮しているせいで、多少不快なことも受け入れるようになっているからだろうと、研究グループは推測している。

このことと、興奮した女性たちがセックスを受け入れることとが、どんな風に結びつくのか、筆者にはいまひとつ釈然としないところがあるのだが、研究グループでは、興奮しているせいで、セックスにつきもののおどろおどろしい行為も、気にならなくなるのだ、といいたいようだ。つまり、セックスとは本来は忌まわしいものなのだが、性的に興奮することで、その忌まわしさを感じなくなるのだ、といっているように聞こえる。

その証拠に、あらかじめ性的に興奮状態に達していない女性にとっては、セックスは苦痛となる場合があると彼らはいう。たしかにそうかもしれないが、その場合に女性が蒙る苦痛と、上記実験で言及されていたような不快なこととは、あまり接点があるとはいえない。

筆者には、セックスとはあくまでもすばらしいものだとしか思えない。性的興奮で感じやすくなることは、セックスに伴う苦痛を和らげるというよりも、セックスの喜びを拡大させるための、自然の摂理のように思える。

(参考)Why Sex Doesn't Gross You Out When You're Aroused By Alexandra Sifferlin TIME






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