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人類の祖先は何を食べていたか


チンパンジーとともに類人猿から枝分かれした最初の頃の人類が、主に何を食べていたのかについては、これまでよくわかっていなかった。カリフォルニア大学の研究チームは、アイソトープ技術を応用して、彼らが球根や根茎などの地下の植物を掘り出して食べていたと推論している。

従来の研究によれば、アウストラロ・ピテクスやパラントロプス・ロブストゥスなど、250万年から150万年前に生きていた人類の祖先は、草や動物の死骸を食べていたのではないかとされてきた。だが、彼らの歯は、現代人の我々のものと似て、横に広く平べったくできているので、草や肉を食うにはあまり適していないという謎があった。むしろ種子のように硬いものを、すりつぶして食うのに適しているのである。

カリフォルニア大学のイーケルJustin Yeakel 教授たちは、アフリカのモール・ラットの化石の歯を分析し、それを人類の祖先の歯と比較してみたところ、形状や化学的組成が非常に似ていることに注目した。また歯に付着しているものの成分をアイソトープ技術で分析したところ、これら両者は同じようなものを食っていたらしいことがわかった。つまり、球根や根茎などの地下植物の痕跡を見出したのである。

モール・ラットは今でも地下で暮らし、球根や根茎を食って生きている。我々の祖先は、学習を通じてこれらの地下植物を掘り出して食うことを覚えたのであろう。人類の発達した脳が、地下の資源を掘り当てるすべを身に付けさせたと考えられる。

現代の人類の仲間にも、ヤムイモやタロイモなどの根茎を主食としている文化は、南洋諸島などで見られる。我々日本人の祖先たる縄文人も、サトイモを主食の一つとしていた。

球根や根茎などの植物には、人間のような大きな動物の体をも養うほどの栄養価がある。我々は今でも、サトイモやジャガイモ、サツマイモを主食がわりに食うほか、玉ねぎやニンジン、ニンニクなど地下の恵を好んで食う。遠い祖先の嗜好が今に息づいているからだろう。

だから、イーケル教授たちの仮説は、決して唐突なものとは思われないのだ。

人類が動物の肉を好んで食うようになり、その結果家畜を飼うようになるのは、そう古いことではないのかもしれない。人類の祖先は気の遠くなるような長い間、他の動物を捕食する立場にあるよりは、肉食獣から狩られる立場にあったようなのである。

(参考)
Human ancestors went underground for dinner By Michael Hopkin : Nature






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