人 間 の 科 学
HOMEブログ本館地球と宇宙東京を描く美術批評動物写真集日本文化プロフィールBBS



人類の祖先はいつ頃から音楽を演奏していたか


人類の祖先はいつ頃から楽器を使って音楽を演奏していたか。絵画のような美術的な活動については、洞窟壁画のような形で残っているのが確認されているが、楽器は壊れやすいこともあってか、その痕跡はなかなか見つからなかった。ところが最近、数万年前の楽器の遺跡が発見され、人間の祖先たちの音楽活動の一端が推測されるようになってきた。

そのひとつは、ドイツ南部ウルム郊外にあるホーレ・フェルスという洞窟で最近発見されたもので、動物の骨を材料にしたフルートであった。この笛には五つの穴が開けられ、音階がコントロールできるようになっていた。

またこれより数年前に、別の洞窟で、マンモスの牙を用いて作ったフルートも発見された。それは先のものとは違い、穴は三本だったという。また発見された洞窟には、壁画も刻まれていたという。

テュービンゲン大学の考古学者コーナルト教授の推測によれば、これらが作られた時期は35000年前のことで、作ったのは、当時ヨーロッパ中に展開しつつあったクロマニョン人らしい。

35000年前といえば、ホモ・サピエンスが姿を現して間もない時期だ。考古学の時代区分にあっては、後期旧石器時代に属する。この時期に、壁画と並んで楽器が作られていたという事実は、人類史の研究に大きな光をあてる発見に違いない。

同時代に生存していたネアンデルタール人には、楽器を残したという痕跡は発見されていないから、おそらく楽器を用いての音楽活動は、われわれ今日の人類に直接つながるホモ・サピエンスにいたって初めて生じたのではないかと考えられる。

古代音楽の専門家フリードリッヒ・ゼーベルガーは、象牙のフルートのレプリカを元に、それを木材で再現してみた。するとその音色は、現代のヨーロッパ音楽と共通する特徴を有していたという。ハーモニーを奏でることもできたらしい。

こうしたことから、現代の世界の音楽のルーツはドイツだとする主張もなされているようだ。だが研究の現状からすれば、そう断定するのは早急だといわねばならない。そういう主張は人種的なバイアスを感じさせる。






HOME人間と文明






作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである