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そしてお金が生まれた:経済と都市の成立



NHKスペシャル「ヒューマン 何故人間になれたのか」第4集は「そしてお金が生まれた」と題して、人類にとってお金がどのようにして生まれたのか、そしてそれが経済と都市と云う人間の新しい生活形態をどのようにして形成したのかについて、壮大な展望を描いている。

お金は人類がお互いにものを交換する過程の中から生まれてきた。どんなものとも交換できる貴重な財、たとえば小麦やコメなどが、最初にお金として使われた。そのうちに、永遠に形を失わないもの、つまりコインがお金として使われるようになって、人類の祖先は我々現代人とほぼ同じような経済システムを作り出すようになった。お金は、それまでばらばらに、それぞれ自足して生活していた人々を経済的に結びつけた。それは人々の間に分業を持ち込み、また大規模な都市が形成されるきっかけにもなった。

最初にコインをお金として用いたのはギリシャ人だった。お金によって、アテネはかつてない繁栄を誇るようになった。しかしその反面、人々の間に格差が生まれるもとともなった、と番組は言う。

お金が生まれる前の人類は、狩猟採集文化のもとで、基本的にはその日暮らしをしていた。その日暮らしには蓄えはないから、いつ何時食料を確保できない事態に見舞われないとも限らなかった。それ故人々は互いに助け合い、手に入れた食料は、平等にわけあった。手に入れた人が他人より多くとるなどということもしなかった。こうすることで、人々は集団が全体として生き延びることをえらんだのだ。このような社会には、だから格差や不平等はない。

ところがギリシャでは、お金によって格差が生まれ、不平等が生じた。そのかわり、お金を貯めることによって、明日への不安がなくなり、個人としては自由の範囲が拡大した。金を貯め込んだものは、それを力として、他人を支配し、場合によっては奴隷にすることもできるようになった。長い間人類がなじんできた平等の文化は、アテネでは次第に放逐されていったのである。

つまりお金が生まれたことで、自由と平等という、人間にとって本質的で、しかももともと両立していた価値が、対立しあうような事態が生まれた、番組はそういいたげなのだ。(写真はアテネのコイン)






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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013
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