|
HOME|ブログ本館|地球と宇宙|東京を描く|美術批評|動物写真集|日本文化|プロフィール|BBS |
|
禿頭を気にしている人々にとって朗報となりそうな話が飛び込んできた。ネズミを用いた実験で、毛の再生メカニズムが解明され、それがどうやら人間にも応用できそうだというのである。 アメリカの皮膚科学の権威コツァレリス George Cotsarelis 博士らのグループは、ネズミの皮膚を傷つけて、その治癒の過程を観察する実験を行った。動物の自然治癒能力を分析するのが目的だったらしい。すると傷つけられた部分の表皮細胞が、幹細胞に働きかけて新たな細胞分裂を引き起こし、それが毛根に成長することが確かめられた。この表皮細胞自体は、もともとは毛根とは関わりを持たないのであるが、皮膚が傷つけられると、それを治癒させるために、毛根を生産するように働くらしいのである。 このメカニズムを加速させるためには、ある種のタンパク質が有効であることも確認できた。それを投与すると、表皮の幹細胞から毛根細胞への変貌が促進され、投与しない場合と比べ二倍の効果が現れるという。 発生した毛は色素を持たないので、真っ白な毛となるが、それをのぞけば周囲の毛と異ならず、立派に機能を果たすそうである。 ネズミで確かめられたようなことが、果して他の動物にも起こり得るのか。博士たちは楽観的である。ほ乳類の生理現象は基本的にはそう大きく異なるものではないとの信念があるからだ。 人間の頭髪が再生する能力を持っていることについては、すでに半世紀も前に提唱されていたという。頭皮に怪我をすると、それを自然に治癒するメカニズムが働き、新たに毛根が形成されるという説であったが、これをまともに取り上げる動きはなかった。というのも、頭皮の怪我が生じると、とりあえず傷口をふさぐことに努力が費やされ、毛の再生については、あまり注意がはらわれてこなかったからだ。 動物が多かれ少なかれ損傷に対する自然治癒能力を持っていることは良く知られている。もっとも劇的なのは両生類における四肢の再生や、トカゲにおける尻尾の再生だ。ほ乳類はそんな劇的な再生能力は持たぬが、毛の再生くらいは天与の能力としてもっているらしい。 博士たちは、ネズミで得た成果を人間に応用しようと考え、ベンチャービジネスを立ち上げたそうだ。うまく行けば数年以内に実用化できるだろうという。 博士らの思惑通りにことが進めば、人類の歴史上画期的な出来事となるに違いない。なにしろ不毛の頭に豊かな毛髪がよみがえるのだ。 (参考) Skin’s own cells could beat baldness By Michal Hopkin : Nature |
|