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ツタンカーメン Tutankhamun の死因:近親婚とマラリア



黄金のマスクで知られる古代エジプトの少年王ツタンカーメン Tutanklhamun (上の写真:CNN提供)についてはこれまで謎が多かった。特に死因についてはわからぬことが多かった。

これまでの研究からツタンカーメンは17-19歳の若さで死んだと推測されている。レントゲン写真から頭蓋骨に穴が開いていることも確認された。そんなことから他殺説が有力になっていたほどだ。ところが最近の研究で、ツタンカーメンは他殺されたのではなく、近親婚とそれによる虚弱な体質、それとマラリアによって死んだ可能性が高いということがわかった。

ザヒ・ハワス Zahi Hawass 氏らのグループは、DNA鑑定を始め多彩な手法を用いてミイラを研究した。その結果ツタンカーメンは古代エジプト第18王朝の強大な王として知られるアメンホテップ三世 Amenhotep Ⅲの息子であること、またその妻は実の妹であることなどが確認された。

古代エジプトでは同じ父親から生まれた子供同士が結婚するなど近親婚は珍しくなかった。ツタンカーメン自身も近親婚によってできた子どもだと考えられている。

次にミイラの身体的な状態を分析したところ、頭蓋骨の穴は生きている間にできたものではなく、ミイラ化の作業の過程で開けられたものと判明した。他殺説は否定されたわけである。

一方ツタンカーメンは非常に虚弱で、また深刻な病気を患っていたことが判明した。病気の中で最も目を引くのは骨の奇形である。背骨が大きく湾曲していたほか、足の爪先が内側に湾曲し、その影響で左大腿部が損傷していた。

ツタンカーメンの肖像画には、わざわざ座った姿勢で弓を引く姿が描かれている。これは普通なら考えがたいことである。王者は王者らしく勇猛な姿で描かれるのが通例だからである。だからこれはツタンカーメン王が歩けなかったことを暗示していると考えてよい。またツタンカーメンの墓からはたくさんの杖が発見されているが、これも王が歩けなかったと考えれば説明がつく。

ツタンカーメンのミイラには心臓血管障害の痕跡も認められた。これは王とともに埋葬された王の一族のミイラにも共通して見られたという。

こうした病気あるいは身体の奇形は近親結婚の影響ではないかと、ハワス氏は考えている。何代にもわたる近親結婚によって、こうした悪影響がでてきたのだろうというわけだ。

さらに王のミイラからは、原生種の寄生虫の痕跡が発見された。マラリアを引き起こす原虫だ。

以上の発見をもとにハワス氏は次のように結論づけている。まず王は身体の奇形によって健康状態をそこない、長生きの出来ない体に陥っていた、近親婚の結果である、そこに寄生虫の攻撃を蒙り、マラリアを発熱した、王が若くして死んだのは、誕生にまつわる運命と寄生虫のせいであると。

ハワス氏らのグループは、ツタンカーメンのような古代人の病気を追跡することは、現代人の病気のルーツを発見する鍵になると考えているそうだ。






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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2013
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