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日本ではあまり聞かない話だが、欧米では歯科の局所麻酔があまり効を奏せず、したがって歯の治療を極端に嫌がる人々がいるそうだ。 アメリカの歯科麻酔の権威ダニエル・シーズラー氏は、歯医者の中で広まっているこうした意見をもとに、組織的な調査を行ったところ、そうした人々は赤毛の人に多いことがわかってきた。赤毛の人は、黒やブラウン、ブロンドなど他の毛の色の人に比べて、20パーセント以上多くの麻酔薬を投与しないと、効果が現れないというのだ。 実際、赤毛の人の多くは、自分には麻酔が利かないと思っており、したがってあまり歯医者に行きたがらず、切羽詰って歯医者の厄介になったときには、通常より多くの麻酔を投与するよう求める傾向が強いという。 何故そうなのか、その生理学的な根拠を追求したところ、次のようなことがわかったそうだ。 髪の毛の色を決める遺伝子にMC1Rというものがある。これが髪の毛の色を黒くしたり茶色くしたりブロンドにしている。ところがMC1Rに突然変異が起こると、赤毛が発生する。つまり赤毛は欧米系の人々にとっては、ノーマルな髪の毛の逸脱した形だということらしい。 ところでMC1Rは、脳内で痛みを感知するメカニズムと密接な関連を持っている。ここからMC1Rの突然変異が痛みに関する感受性に影響を与えているのではないかと推測される。 突然変異したMC1Rを持っている人たちは、痛みに非常に敏感だということが確かめられた。彼らは歯の治療に不安を感じており、治療によって蒙る痛みに恐怖感のようなものまで感じている。 以上のことからシーズラー氏は、赤毛の人がより多くの麻酔薬を歯医者にねだるのには、十分な根拠があるといっている。 それにしても、同じ人間でありながら、痛みに強い人もいれば、弱い人もいるとは、自然のいたずらといって済まされないことかも知れない。痛みは、痛みを感じる人にとっては、他人事ではすまないからだ。 |
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