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目の老化は万病のもと



人間、加齢によって様々な不都合が起きてくるのは、自然の摂理というべきもので、逆らいようがない。誰もがそれを、老化の必然的な結果として受け止めている。年をとれば体力は衰えるし、風邪にもかかりやすくなる、若者のような勢いはないから、一旦風邪にかかったら肺炎になる可能性も高い、年をとって肺炎になれば、死ぬ確率も飛躍的に高まるというものだ。

老化の中でもやっかいなのは目の老化だ。いわゆる老眼といって、人は年を取ると、今までまともに見えていたものが見えなくなる。それに加えて白内障ともなると、視力は全面的に落ちる。目が見えないということは、人間にとって致命的なことだ。目が見えないということは、世界の中での自分の立場が見えなくなるということを意味するからだ。

目の老化はそれに加え、身体の健康全体を破壊するように作用する。単に物が見えなくなるだけではなく、身体のあちこちに不調や病気が発生する。

なぜそうなるのか、目と身体との戦略的とも称すべき関係について、アメリカの眼科医学者マーチン・メインスター、パトリシア・ターナー夫妻があきらかにしている。

夫妻が最も注目しているのは、目の老化によって、自然の光が人間の身体に十分に行き渡らず、その結果として、身体のバイオリズムが狂ったり、病気になったりするという負のメカニズム発生することだ。

人間というのは、自然の光を、目を通じて感知することで、身体のバイオリズムを維持している。目の網膜の組織が光を感知すると、それが脳に伝えられて、これから活発な時間が始まるとの合図になる。逆に光が脳に伝わらなくなると、活動を停止して寝る時間が来たということの合図となる。つまり人間は、目の組織を通じて光の変化を弁別することで、一日のバイオリズムの基礎となる、対内時計を働かせているわけなのである。だから、目の老化によって、光の状況をただしく把握できなくなると、バイオリズムは崩れて不眠に見舞われることとなり、また高血圧をはじめ様々な病気にかかりやすくもなる。

つまり目の老化が万病を引き起こすもっともクリチカルな要因となる、そう夫妻は主張するわけなのだ。

たしかに、目が悪くなることは、夫妻に指摘されるまでもなく、健康にとって非常に悪い事態であり、したがって病気にもなりやすいだろうということは、筆者のような無学な者でも納得できる。

せいぜい、年をとって衰えた自分の目をいたわりたい、夫妻の言い分を聞いて、そんな風に感じさせられた次第だ。(イラストはエレン・ワインスタイン:Economistから)

(参考)Aging of Eyes Is Blamed for Range of Health Woes By LAURIE TARKAN






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