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アルディピテクスのアルディ:人類最古の祖先



人類がチンパンジーと共通の祖先から枝分かれしたのは600-700万年前のことと考えられている。その時から人類とチンパンジーはそれぞれ独自の進化を歩んできたと思われるが、その過程で現在の人類に直接つながる祖先として分っている限り、アウストラロピテクス Australopithecus が最古とされてきた。彼らが生きていたのは、300-390万年前のことだ。

ところがアウストラロピテクスより古い時代に生きていた祖先のことが、新たに解明された。アルディピテクス・ラミドゥス Ardipithecus ramidus と呼ばれる種がそれだ。これは発掘された地層その他の状況から、440年前に生きていたと推定される。

アルディピテクスの化石の断片が始めて発見されたのは1994年、エチオピアでのことだ。その後次々と発見された骨の断片125点をつなぎ合わせて、この度ついに、一人分の骨格の再現に成功した。

復元された骨格の主は、身長が約120センチ、体重が約50キロの成人女性だ。種の名前アルディピテクスにちなんで、アルディと名づけられた。(上の写真:ナショナル・ジオグラフィックより)

骨の構造からアルディの行動様式を推測すると、次のようになるらしい。

彼女の基本的な生活場所は樹上であったようで、四肢をフルに用いて枝から枝を移動していたものと思われる。当時のエチオピアは現在とは異なり、森林地帯だったのだ。一方体幹はホモ・サピエンスと同様S字型を描いており、腕や脚の特徴から二足歩行していたことが確認できる。しかしそんなに長い間地上を歩き回ることはなかったと推測される。

能の容量は300-350cc程度で、人間よりもチンパンジーのものに近いが、頭蓋骨の下部の構造からみて、ホモ・サピエンスと同じような収まり方になっており、その後容積が大きくなっていくための余地を十分に感じさせる。

歯はチンパンジーよりホモ・サピエンスに近く、食いちぎるより噛み砕くのに適した特徴を持っている。恐らく硬い木の実や果実を主食にしていたのだろう。

これまで我々は祖先のイメージを、アウストラロピテクスのルーシーに託していた。アルディはそのルーシーより100万年も前に、エチオピアの森林で生きていたのだ。

ダーウィンは進化の系統をたどるためには、忍耐強いフィールドワークが必要だといっていた。今回はそのフィールドワークのおかげで、人類の祖先の系統を一歩先までたどることが出来たわけである。

人類の祖先が独立してからアルディが生きていた時代までの約200万年間については、いまのところその時代に生きていたと思われる個体の骨の断片が見つかったりして、それをもとにいくつかの種の存在が推測されているが、詳しいことはわかっていない。

それも今後の忍耐強いフィールドワークによって、次第に埋められていくことだろう。

(参考)  Before Lucy came Ardi, new earliest hominid found By Randolph E. Schmid






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